日本を代表する美人画家で、今なお大人気の上村松園画伯。銀座の画廊界隈でも日々話題となっており、お客様からのご購入依頼が多く入っています。京都で生まれ著名な先生のもとで修業を重ねて、独自の美人画世界を確立しました。昭和23年には女性初の文化勲章を受賞。代表作の一つ「序の舞」は後に宮尾登美子原作の小説の題材にもなりました。銀座の画廊勤務時代のある日、美術市場で松園先生の珍しい作品が出品されました。美人画が有名ですが遊び心や品格を感じる作品です。私が幼い頃、中秋の名月で月を見上げると祖母が「あのお月さんで、兎がお餅をついている」と耳元で語ってくれたので、本当に月に兎がいると信じていました。その思い出が重なり、気が付いたら購入していました。紅白を主とした色彩は綺麗で、おめでたい雰囲気を醸し出す構図。見ればみるほど気分が楽しくなった作品です。美術商は人気の図柄ではなく、自分の感性で絵を仕入れすることも多く、時にはそれが不良在庫となるのですが、幸運にもその後、日本画の先生がこの作品を気に入って頂きご購入頂きました。上村松園先生の美人画作品で、画廊主が一番最初に見るのが「顔」。白を基調とした胡粉の状態確認を行います。制作されてから70年を超える月日が経過していますので絵の具が心配です。殆どの作品が軸装ですからデリケートな取り扱いが必要な美術品です。近年は軸から額装へと入れ替えが行われています。しかし、松園先生は掛け軸がとても似合いますので私は表装をお勧めします。